競馬にかけた男達 迷走が人を時に無謀へと走らせる

競馬に熱いドラマがあるように
競馬を取り巻く人の中にもドラマがあります。

タイトルは、競馬にかけた男達。
何かマグロにかけた男達みたいな感じがしますが、
まあ内容は全然違いますw

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今回は競馬場で面白い体験をした話をしていきたいと思います。

本当の話?と思われそうですが
本当にノンフィクションの話です。

まあ遊び気分で読んでもらえたら、嬉しいです。

競馬場で起こった不思議体験。

結構前のお話です。

私は当時馬券を買う時は、だいたいウィンズでした。
なぜなら、自宅から競馬場までは遠く、朝早く起きても
往復で結構な時間がかかるので、ほぼ行く事はありませんでした。

しかし、その日はなぜか競馬場にいました。

G1レースがあったというのもありますが
気分的に競馬場に行こうという感じになっていたんだと思います。

もしかすると、今思えば運命だったのかもしれません。

私は前日の夜に、いつものように競馬新聞を見て予想をし、ある程度
目ぼしい馬に買う印をつけていました。

そして、当日競馬場についたのが、3レース終了間際くらい
さて最初は腹ごしらえでもして、5レースか6レース目から
やろうかと思っていました。

美味そうな肉厚の焼き鳥が売っていたので、それを頬張りながら
新聞を眺めていたのですが、ふと何かが気になり辺りを見回しました。

すると、一人の初老の男性に目がいきました。

その男性は、無精ひげで何か切羽詰まっているような顔をしながら
競馬新聞を真剣な目で見ていました。

周りはだいたい仲間とワイワイしながら、話してたりタバコ片手に
新聞を眺めていたりと、実にリラックスしながら競馬を楽しんでいるような面々。

そこにひと際目立って見えたのが、その男性でした。

で、我に返り、いやいや人の観察してる場合じゃないな。
馬の観察しようっと、パドックに向かいました。

その日は、なぜか予想が冴えまくり、新聞に印をつけていた馬が
パーフェクト連対。6.7.8レースと思ったように当たり
収支もウハウハ。

あまりにも読みがズバズバ当たるので、テンションは高めで
笑みがこぼれるという、知らない他人から見たら、特に女性から見たら
近づきたくない人になっていたかもしれませんw

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9レースも的中し、財布も喜んでいた頃、さきほど焼き鳥を買った店付近で
見かけた初老の男性がいました。

相変わらず、険しい表情でさっき見たよりもやつれているような雰囲気。

私は勝っていたので、その時の気持ちとしては出来るだけ運の悪そうな人には
近づかないほうがいいし、見ないほうがいいなと思いました。

意識から、初老の男性を遠ざけました。

そろそろ外れるかもなーと10レースは、少額で様子を見たのですが
これも当たり、5レース連続の的中です。

あれっ今日の自分は神がかってるな。

調子が良すぎて、逆に不安になるくらいでした。

そして、メインのG1レースの30分前の事です。

今日のその時がやってきました。

またあの男性に出会ってしまったのです。

えっなんで?と思いました。

こんなに大勢の人がいて、G1レースもあっていつもより
凄い人混みの中でこんなに同じ人と会う偶然ってある?

そして、向こうの男性もそれに気づいたようでした。

私は一瞬目をそらしたのですが、男性は距離をつめてきました。

その距離がついになくなり、目の前にきた時、男性の口から
言葉が出てきました。

今日は、あなたと良く会いますね。

笑顔で語りかけてきました。あーなんだ変な人ではないんだな。

そんな第一印象。実はその男性田中さんは、私が気づいていたように
ほぼ同じタイミングで3度あった事に気づいていたのです。

私はそうですね。こんな事もあるんですね。ととりあえず
スマイル返しをした。

田中さんは、今日調子どうですか?と聞いてきたので
んーまあ自分で言うのもなんですけど、絶好調なんですよね。

6レースからパーフェクトと言った瞬間。
今まで曇っていた目の田中さんの目が輝き始めました。

本当ですか?を3回も連呼してきたので
競馬新聞を見せ、前日につけていた印の事と
その結果を一部始終話しました。

田中さんは先ほどの覇気がなかった顔が
みるみるうちに変わっていました。

まさに私という獲物をとらえたという表情。

その時は、全く気付かなかったのですが、田中さんは
相当焦っていた模様で、藁をもつかむような気持だったそうです。

田中さんは、聞いてきます。

G1レースはやられるんですか?と
私はもう十分勝たせてもらったのでG1は多分1番人気が
来るんでしょうから、それは買わずに遊びでワイド一点買ってみてます。

そう言うと、1番人気の馬を自分は買う予定なんですと
言い始めました。

そして、自分の持っているお金を単勝一点につぎ込むと
言ってきました。

本人も相当迷いがあったのでしょう。

G1レースまでのこれまでのレース1R~10Rは一度も当たらず
完全に自信を失っていました。

このレース外れるわけにはいかないんですと切羽詰まった様子で
話す田中さん。私は、圧倒的一番人気の馬の不安な要素を少し話しました。

普通に走ればこの馬ですが、出遅れ癖もあるので単勝はちょっとやめておいたほうが
いいと率直な意見をしました。

田中さんは、次第に私の話に飲み込まれていました。

そして、事もあろうに無謀な決断をしたのです。

あなたの予想に全乗りさせてくださいと、
私は構わないですけど、責任は持てませんよと
笑いながら言ったのですが、田中さんの顔を真剣そのもの。

さっき初めて言葉を交わしたばかりのどこの馬の骨とも
分からないような私の言葉に酔い、自分の買い目を蹴るのです。

人は、迷うと時に無謀な行動をしてしまいます。

田中さんに買い目を教えると、一目散に馬券売り場に走っていきました。

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私は、まあ買う途中で考え直すか、ちょっとだけ買い目に足すくらいに
思っていました。

自分がノリノリで高い所から見下ろすような気分というか立場で
必死にもがいている田中さんを見るのが、ちょっとした優越感だったのかもしれません。

でも、とにかく外れた後に文句を言われたら困ると思い、G1レースが終わったら、即帰ろうと
思っていました。

そうこうしているうちにG1レースがスタート。
そこで、なんと私の不安が的中しました。一番人気の馬が出遅れたのです。

あーやっちまったなーと思いながら、見ていると結局1着どころか
馬券内にも届かず、逆に私の買い目であるワイド一点予想が見事的中。

15倍ほどの配当がつきました。おーマジかー今日ホント凄いなと思いながらも、田中さんの事が
脳をよぎりました。

あの人(田中さん)馬券買ったかなーでもなー結局自分の予想に戻して今頃沈んでるんじゃ、、

まあどっちでもいいかと払い戻し所で並んでいると、、後ろからトントンと肩を叩かれました。

振り返ると、そこには涙を浮かべた田中さん。

あーやっぱり買わなかっただなーと思っていると、ありがとう本当にありがとうございます。
(どっかで聞いたようなセリフ)

そして、次の瞬間。泣き崩れるようにとてもキレイとは言えない競馬場の地べたに額をつけ土下座をしてきたのです。

おいおい。周囲の人達は何が起きたんだと好奇な目で私と田中さんを見ています。

ちょちょちょっとヤメテ下さいよ。田中さん起きて下さい。

ガクガクと落ちた身体を無理矢理にでも起こし、周りの迷惑も考えた私は
まだ払い戻しの終わっていない馬券を一旦財布にしまい、田中さんを連れ
別の場所へ移動。

田中さんのズボンの汚れを払いながら、私は困りますよ。あんなところで土下座なんてされたら、完全に私が悪い人みたいじゃないですか。

す、すみませんと謝りながら、またありがとうございますと言い始める田中さん。

一体どうしたんですか?と言うと、田中さんはおもむろに震えた手で購入したであろう馬券を私に見せてきました。

えっ!私の買い目本当に買ったんですか?うなずく田中さん。

その事よりも私が一番驚いたのは、購入した馬券の金額です。

ナント!50万一点買い。

田中さんは続けます。私の全財産を投入しました。
あなたの予想に乗って本当に良かった。

こんな経験は人生で生まれて初めてです。

何と言っていいか本当に分かりません。

言葉にならないくらいお礼の気持ちでいっぱいです。

(私の心の声 実況
いやいや、私も人生で初めてですけど、ビックリなんてもんじゃない。

私なんか5千円しか買ってないですしね。)

とにかく早いとこ払い戻しにいきましょう。

まだおぼつかない足で歩く田中さんを支えながら
払い戻しに行く。

高額払い戻しのため、窓口で現金を受け取る。

コ、コレは、

紙袋に入れた札束。

田中さんはお礼と称して、私に一束をくれようと
しましたが、受け取りませんでした。

それでは、私の気持ちが収まらないというので
じゃあ、回らない寿司でもご馳走してくださいよと
冗談半分で言ったら、喜んですぐ行きましょう。

えっ?今から?、もちろんです。

お礼は早いほうがいいですから。

というので私も払い戻しをすませ
競馬場を後にしました。

高そうな寿司屋で田中さんはどうしても
お金が必要だったわけを話してくれました。

実は田中さん店をやっているらしいのですが、
毎月赤字続きで、今月までに200万ないと潰れるかもしなかったとの事。

来月も100万必要だったようで、競馬場には
全財産80万円を持ってきたとの事でした。

なんとか持ち金を4倍に最低でも2.5倍にと
人生をかける様な思いだったそうです。

というか人生かけてますよね。

まさに競馬にかけた男ですよ。

そして、私との運命的な出会い。

これでしばらくは、ぐっすり眠れそうですと田中さん。

私は遠慮なく、高級ネタの大トロやウニを腹一杯食べました。

さっきまでノリノリだった私ですが、田中さんの高額払い戻しを
見てから、完全に立場が逆転したような気持ち。

それでも、終始田中さんは、低姿勢。

ふた回り以上も年齢差がある私にそんな感じなので
寿司屋の主人も不可思議に思っていたに違いないです。

話をすればするほど、田中さんは良い人でした。

でも、逆を言えば人が良すぎるとも思いました。

私はそんな田中さんに失礼を承知で、アドバイスをしました。

もう二度とこんな勝負をしてはいけないと
ダメだった事を想像すれば分かるはずです。

今回は本当にラッキーだっただけで、身も知らない私のような人間を
信用するのもいけないと言いました。

それに加えて、田中さんはトイレに行くとき、荷物を全部置いていくような人でした。

私がどんな人間かまだ分からないのにです。

田中さんは私の言う通りだと反省したようでした。

田中さんは私の事をたいそう気に入ったらしく
その後、お互い連絡先の交換をしようという話になりましたが
私はそれはしない事を田中さんに提案しました。

なぜなら、私も人間です。
お金が必要になった時、お礼の事を考えるかもしれません。

田中さんもまた切羽詰まった時、私に頼り競馬でもう一勝負をしようと
思うかもしれません。

今ここでお別れをすれば、どちらもイイ思い出で終わる事ができるし
この良い思い出を無駄にしないよう頑張れるじゃないですか。

そう言って、お互い最後の握手を交わし別れました。

追記 後で考えれば考えるほど、私のした行為が人一人の人生を左右していたかと思うと
ゾットしました。あまり軽はずみな事はしないほうがいいですね。助かったから良かったけど、

記事下
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職場の同僚(女性)が隠れ競馬ファンだった。

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